2004年度青森県タバコ問題懇談会開催に寄せて

会長  木村 茂

 青森県タバコ問題懇談会(旧・青森県喫煙問題懇談会)も回を重ねました。
 今、喫煙問題は10年前に比べるとまさに隔世の感があります。喫煙問題を取り上げるだけでマスコミに白い目で見られ、反喫煙を唱える人々は変わり者の集団と思われておりました。喫煙問題の本質は二つあると思います。一つはもちろん健康被害です。私たちはそれぞれの専門的立場からこの問題を取り上げ、害を知らされていない人々に真実を伝えようと努力して参りました。今やっとマスコミはかなりの分量の記事を送ってくれるようになりましたが、問題はテレビの取り上げ方だと思います。これだけ影響力の強い電波を送り出して、あふれるほどの下らない芸能人スキャンダルの、せめて十分の一でも否、百分の一でもいいからタバコを批判してくれたらと思います。やはり正面の敵は「日本たばこ」なのです。もちろん喫煙者の政治家や、表ばかり気にする政治家つまり信念を持たない政治家たちと一体ですが。毎年の市町村の健康診査の会場でみられる喫煙者、「検診を受けるならまず禁煙」ぐらいの標語を会場のあちこちに目ざわりになるくらい貼ってほしい。
 さて二つめは他人に迷惑をかけてはいけないという、社会生活の基本条件がこの国では何故かなおざりにされています。2、3年前ドイツへ行ったときのことを思い出します。ある午後、始発駅をでた市内電車の中での出来事ですが、小学生から中学生ぐらいの子どもたちが5、6人どやどやと乗り込んできてがやがやとおしゃべりを始めたのです。すると突然前部の運転席から身を乗り出した運転手が、ドイツ語で恐ろしい声で怒鳴りました。子供らはたちまちシーンとしてしまいました。子どもの頃からの大人たちによる厳しいしつけです。先生や親かどうかは問題ではない。人混みの中でタバコはもちろん携帯電話をかける人を見たことがありません。まして歩行喫煙など場所によっては立派な犯罪行為なのです。
 子どもたちへの自由放任主義、これだけ若年者の喫煙が増えるのは理由があります。未完成な子どもたちをしつける大人の義務を思い出しましょう。先頃亡くなった中野孝次氏の「現代人の作法」(岩波新書)をご一読あれ。
 日本はこれからどうなるのでしょうか。物事の善悪をわきまえた若い人たちに今後の活動をゆだねたいと心から思い、以上思い出すままにしたためました。

2004年8月28日

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